農家さんのストーリー
── 20年の眠りから覚めた田んぼと、里山の未来を守る「ヤマガノヒカリ」の物語
故郷の風景を守りたい。葛藤から始まった米作り
広島県北、三次市山家町。美しい里山が広がるこの地で、私たちは2016年から父のぶどう園を受け継ぎ、果実作りに励んできました。地域の方々に支えられながら歩むうち、周囲の高齢化が進み、「田んぼを維持してほしい」という声や、営農組合からのお誘いを受けるようになります。
しかし、現代の日本の米作りは苦難の連続です。資材や肥料は高騰する一方でお米の買取価格は安く、「作れば作るほど赤字になる」と嘆く周囲の農家さんの姿を目の当たりにしていました。高価な機械も持たない身として、正直、最初は米作りに乗り気ではありませんでした。
それでも、私を育ててくれた大好きな地域が過疎化し、思い出の田んぼが荒地になっていく姿を黙って見過ごすことはできませんでした。「過疎で荒れていく里山の風景を、次の世代に引き継ぎたい」。その一心で、私たちは無謀とも言えるチャレンジを始めたのです。
理想と現実、そして「DOHOスタイル」との出会い
最初の2年間は、従来の慣行栽培で必死に頑張りました。しかし、結果は諸先輩方の言葉通り。やればやるほど赤字が膨らむ現実に直面します。
「ならば、憧れていた農薬や化学肥料を使わない栽培に挑戦しよう」と自分流で試みたものの、今度はぶどうの苗木を半分近く枯らしてしまうという手痛い失敗を経験しました。
暗中模索の中で出会ったのが、「DOHOスタイル(道法スタイル)」でした。
それは、肥料を与えるのではなく、剪定や仕立てによって植物自身が持つ「植物ホルモン」の力を最大限に引き出すという画期的な農法です。この農法なら、自然を傷つけず、コストを抑えながら、本当に安心で美味しい作物が作れるかもしれない──。私たちは、この新たな挑戦に全てを賭けることに決めました。
地域と、子どもたちと、美しい自然を未来へ
こうして20年間眠っていた田んぼに再び命が吹き込まれ、立ち上がったのが「ヤマガノヒカリ」プロジェクトです。
地域の未来を担う地元の小学生やイベント参加者の皆さんと共に、泥にまみれながら一本一本「手植え」をし、秋には「手刈り」、そして秋風と太陽の恵みを受ける「はでぼし(天日干し)」で、じっくりとお米を乾燥させました。
出来上がったのは、環境に配慮した低農薬・無肥料、そして20年の眠りから覚めた奇跡の田んぼで育ったお米は「無農薬・無肥料」の生命力あふれる逸品。植物本来の「生きようとする力」がもたらす、優しくも力強い味わいが自慢です。
私たちが守りたかった、三次市の美しい自然と温かいコミュニティ。その結晶である「ヤマガノヒカリ」を、ぜひ一度味わってみてください。あなたの一膳が、この里山の未来へと繋がっています。