足元にはふきのとうが顔を出し、見上げれば満開の梅。春の気配に誘われるように、辰巳農園のぶどうたちも「水揚げ」という名の目覚めを迎えました。
この時期、私たちが一枝ずつ丁寧に行うのが『芽傷(めきず)』という作業です。芽のすぐ上に小さな傷をつける——。一見すると痛々しく見えるかもしれませんが、これはぶどうに「さあ、芽吹く時間だよ」と教える大切な合図。
植物の中では今、発芽を抑える「オーキシン」と、成長を促す「ジベレリン」、そして花を咲かせる「サイトカイニン」たちが、複雑に、そして美しくバトンを繋いでいます。
私たちは、この植物ホルモンの目に見えない流れを読み解き、そっと背中を押してあげる。自然の力を信じ、そのリズムに寄り添うこと。それが辰巳農園の目指す、ぶどう作りのかたちです。



